胆石症とは、胆嚢、総胆管、肝内胆管に結石ができる病気であり、それぞれ胆嚢結石症、総胆管結石症、肝内結石症と病名が付けられています。しかし約9割の患者さんは、胆嚢にだけ結石が存在する胆嚢結石症例です。また胆嚢結石は組成から、コレステロール石と色素石に大きく分けられ、さらに色素石にはビリルビンカルシウム石と黒色石とがあります。
コレステロール結石はコレステロールと胆汁酸の代謝バランスが崩れることに生成され、食生活が大きく影響していると言われております。最近は食生活の欧米化に伴い、コレステロール石が最多となっております。ビリルビンカルシウム石は胆汁の細菌感染によって生成され、溶血性疾患や肝硬変等の全身疾患がある場合は黒色石が生成されることが多いです。
主な症状は、腹痛、発熱、吐き気、黄疸ですが、胆石を持っていても、8割前後の人はまったく症状がありません。腹痛は食後、とくに生卵や油っこいものを食べた後に生じるのが典型的です。胆石がつまり、急性炎症を起こした場合には、発熱、黄疸、肝機能障害なども生じ、急性胆嚢炎、急性閉塞性化膿性胆管炎や急性膵炎、敗血症などの重篤な状態になることがあります。
よく行われる検査は、腹部超音波検査(エコー検査)です。おなかにゼリーを塗り、体外から超音波を発信して検査するため、痛みや障害がまったくありません。その他には、造影剤を注射して行うCT検査(DIC-CT検査)、磁気共鳴胆管膵管撮影検査(MRCP検査)などがあります。
胆石症の治療胆石のみを取り除く方法としては、内服薬で胆石を溶解する治療法や体外からの衝撃波で破砕する治療法がありますが、有効性は低く、再発する可能性もあります。したがって根本的治療として胆嚢そのものを摘出する手術が行われています。
かつてはおなかを大きく開けて胆嚢を摘出していました(開腹手術)。しかし1990年代頃から、カメラ(腹腔鏡)を用いた「腹腔鏡下胆嚢摘出術」が行われるようになり、現在ではほとんどの胆嚢摘出術が腹腔鏡を用いて行われています。開腹手術と異なり小さな創(きず)で手術を行うため、患者さんの受ける障害は少なく、早期の退院や社会復帰が可能となりました。小さな創1ヶ所のみで行い、創をほとんど目立たなくできる「単孔式手術」を行うこともあります。
また、総胆管結石については、当院も含めて多くの病院で内視鏡による治療が行われていますが、当科では胆嚢摘出術と同時に胆管結石を摘出する手術も行っております。
胆石が見つかっても、症状がなければ、必ずしも手術を受ける必要はありません。しかし症状がある場合や、無症状でも他の持病があって炎症が生じると重篤になりやすい場合などは、早期の手術が望まれます。また10mmを越える胆嚢ポリープがある患者さんにも、がんの危険性があるため手術をお勧めしています。
外来で手術に必要な検査を行います。通常、手術前日に入院していただき、術前処置を行います。手術は全身麻酔で行い、手術に要する時間は1-2時間程度です。手術当日は安静を要しますが、翌朝からは水を飲み、トイレに歩行できます。さらに昼からは食事を開始し、順調であれば、術後3日目に退院できます。その後外来を受診していただき、全身や創の状態を観察します。以後は通常の生活を送ることができます。
手術により胆嚢結石が総胆管に落下することがあるため、当院では術後にもCT検査(DIC-CT検査)か磁気共鳴胆管膵管撮影検査(MRCP検査)を用いて総胆管結石の確認を行っております。万が一、術後に総胆管結石が認められた場合は、消化器内科で内視鏡 (内視鏡的逆行性胆管膵管造影: ERCP)による検査を行い、結石を摘出します。
胆石症にてお悩みの患者さんがおられましたら、是非わたしたちの外科外来を受診され、ご相談いただければ幸いです。