第135回 日赤医療集談会

平成27年12月15日(火)
東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野 教授 中里 信和

てんかん診療連携の新時代 ~発作ビデオで考える~

 てんかんは脳の興奮(=てんかん発作)をくりかえす疾患です。てんかんをお持ちの方は100人にひとりですから日本には100万人以上になります。しかし,みずから病名を公表する人は少なく,患者数は実際よりも少なく見積もられているのが現状です。てんかんはまた,赤ちゃんからお年寄りまで,いつでも誰でも新しく「てんかん」を発症する可能性があります。

 てんかんは治らない病気でしょうか? 患者さんだけでなく,医者や看護師,あるいは神経疾患の専門医でさえも「てんかんは治らなくてもしかたがない」と考える人がいます。実際には,正しい診療で8割近い患者さんが普通の生活をおくれるといわれています。問題は,本来は発作を抑制できるはずの方が,不十分な診療によって「みかけ上の」難治てんかんと誤解されている場合が少なくない点です。

 てんかんはきわめて多様な疾患群です。患者さんひとりひとりがまったく異なる発作の型や原因をお持ちです。一般の方や医師でさえも,いわゆる大発作だけがてんかん発作と勘違いされている方が多いのですが,実はもっと小さい目立たない発作の方が数では圧倒的に上回っています。たとえば側頭葉てんかんなどでは,意識がぼんやりして,動作が止まってしまう発作が主体です。本人はまったく覚えていませんから周囲の方からの情報が大切になります。また意識はハッキリしていても,音や光や体の一部のシビレ感や恐怖感など,おかしな感覚だけが出現する発作もあります。

 外来診療のみでは発作が消えないなど悩みを抱えている方の場合はとくに,入院の上,ビデオ脳波モニタリング検査を受けることをおすすめします。発作の瞬間をとらえることによって正しい診断が得られ,新薬や外科治療を含む最新の医療で,患者さんの人生は大きく変わるのです。

 てんかんではまた,発作のない時でも継続する症状や悩みを抱えている方が大勢いらっしゃいます。個人差はありますが,記憶障害や抑うつ症状に悩む方,薬の副作用に悩む方,運転免許や仕事で悩む方,妊娠や出産に悩む方,周囲の偏見に悩む方など,様々です。人生すべての悩みが,てんかんという病名だけで大きく感じられる方もいるかもしれません。しかし私たちは,病気に関連した悩みも解決すべく,多くの専門家とチームを組んで活動を行っています。

 患者さんには「てんかんの4文字で人生をあきらめないように」と私たちは訴え続けています。また医療関係者には「てんかん診療を軽視せず,早く専門医に紹介を」と叫んでいます。発作でお悩みの方は,まずは私が監修した患者向けの「てんかんのことがよくわかる本(図1)」を御一読いただき,てんかんをあきらめずに自分のベストの人生を見つけて欲しいと願っています。


▲ 図1 「てんかんのことがよくわかる本」(中里信和・監修)