日赤医療集談会・リハビリテーション医学の実践

リハビリテーション医学の実践 ~脳卒中のリハビリテーションを中心に~

リハビリテーション(以下、リハと略す)は殆ど全ての疾患・外傷と年齢層の患者さんが対象となります。ここでは脳卒中のリハを例に挙げてリハの実際を解説します。

脳卒中は脳血管の閉塞または破綻によって生じる急性発症疾患であり、数日以内に病巣が確定した後、病巣周辺の機能低下部の回復と中枢神経回路の組み換えにより、残存機能が環境に適応する形で回復していきます。したがって、到達する機能は病巣によって一義的に決まるのではなく、発症前の脳の構造と機能、さらに発症後のリハによって大きく影響されます。リハは急性期、回復期、維持期に分けられます。

急性期リハの柱は早期座位であり、基本的な日常生活動作の確立に主眼を置きます。開始時期は病型と症状から判断し、進行・再発に対するリスク管理を行います。関節拘縮や褥瘡の予防はもちろん、誤嚥性肺炎や尿路感染症、深部静脈血栓症などの合併症の予防・管理がリハを進める上で重要です。リハの治療計画の作成と処方は障害評価に基いて行われ、評価には機能がどのように回復するかの予測が含まれます。発症後早期においては、一見重症に見えてもリハで大きく改善する可能性のある患者さんを見落とさないように注意することが大切です。

回復期のリハはダイナミックなチーム医療です。多職種による精度の高い障害評価と回復の予測に基づき、治療目標が共有され、生活全体が治療の場として構成されます。また、急性期よりも患者さん・ご家族の主体性が発揮されることが求められ、それを促進するコミュニケーションが大切となります。リハ治療は学習の原理によって計画されます。すなわち課題難易度の設定、フィードバック、反復、動機付けを適切に行い、中枢神経回路の組み換えを最大限引き出して社会・環境への再適応を図ります。私たちは回復を促進する治療機器の開発に取組んでおり、末梢神経をパルス磁場で刺激する装置の製品化に成功しました。

維持期は生活期とも呼ばれ、医学的には再発と廃用症候群(身体を動かさないでいると機能が衰えること)の予防が重要です。機能的目標が比較的合理的に提示される回復期と違い、患者さん・ご家族の生活上の要望や人生の展望をふまえた対応が求められ、リハはより個別的となります。それを遂行するためのコミュニケーションは重要な医療技術であり、その一つにコーチング2)があります。

以上のように脳卒中のリハは、多職種による個々の治療技術を、最適なタイミングと組合せで提供し、それによって患者さん・ご家族による、回復への主体的な取り組みを促進し、社会への再適応を実現するシステムであるといえます。

文献
1.出江紳一、八島建樹:末梢神経連続パルス磁気刺激の製品化. BIO Clinica 2015年30巻12号45-49頁.
2.出江紳一(編著):リハスタッフのためのコーチング活用ガイド . 医歯薬出版株式会社、2009年.