日赤医療集談会・幼児・学校検尿

菅原典子

はじめに

 1974年に本邦で学校検尿の制度が始まって40年が経ちます。学校検尿は、慢性腎炎などの腎疾患を早期に発見し、早期に治療介入することを可能にしました。これにより、末期腎不全 (end-stage renal disease; ESRD)への進展を防ぐ、あるいは遅らせることができる可能性があります。しかし、これまで学校検尿には全国一定のシステムが存在せず、専門医に紹介するための明確な基準がありませんでした。

 現状を踏まえ、日本小児腎臓病学会から2015年3月に『小児の検尿マニュアル-学校検尿・3歳児検尿にかかわるすべての人のために-』が出版されました。本書を活用し、こどもたちが全国どこに住んでいても適切な治療の機会を得られるよう、医療関係者のみならず、学校や行政の担当者などの現場のスタッフに対しても充分に啓蒙していく必要があります。
 今回はこのマニュアルをもとに、専門医への紹介の基準と専門医が精密検診でどのような検査を経て診断・治療を行うかについて概説します。

1) 検尿で見つかりやすい腎疾患と紹介の基準
 学校検尿では、尿蛋白・尿潜血を指摘されて慢性腎炎が見つかることが少なくありません。二次検尿でも尿蛋白が定性で1+以上もしくは、尿潜血が1+以上の場合、精密検診を受けることとなります。一方、3歳児検尿では、尿蛋白を指摘されて先天性腎尿路奇形(congenital anomalies of kidney and urinary tract; CAKUT)が見つかることが多いです。二次検尿でも尿蛋白が±以上のときには専門医の診察を受けることとなります。尿潜血の多くは無症候性血尿であることから、3歳児の一次・二次検尿でのチェック項目は尿蛋白のみとなっています。

2) 小児腎臓専門施設での対応
 精密検診としての小児腎臓専門医の診察では、出生歴・家族歴を含めた問診、尿検査、血液検査、腎エコー検査、身長・体重測定、血圧測定などが行われる。以下に特に注目すべき項目について説明します。

ⅰ) 尿蛋白/尿クレアチニン(pro/Cr)比
多くの場合、一日尿蛋白量を測定するのは困難であり、これとよく相関する代替値として、随時尿検査結果から簡便に算出できるpro/Cr比が用いられます。cut off値は0.15 g/gCrです。

ⅱ) 血清クレアチニン (creatinine; Cr)
正常値は年齢・性別・筋肉量で大きく異なる。このため、日本人小児の血清クレアチニン基準値を参考にしてください (Uemura O, et al. Clin Exp Nephrol. 15: 694-99, 2011.)。

ⅲ) 血清シスタチンC (cystatinC; cysC)
年齢・筋肉量等によらず、正常値は0.6〜1.0 mg/Lです。著しく筋量の少ない患児の場合、本検査が有用です。ただし、腎機能が低下した場合には変化が乏しくなるため注意が必要です。

ⅳ) 推定糸球体濾過率 (estimated glomerular filtration rate; eGFR)
従来、血清Cr値を指標とした簡易計算式はあったものの、日本人小児を厳密に反映していませんでした。このため、近年相次いで、日本人の血清Cr値もしくは血清cysC値からのeGFR計算式が報告されています (Uemura O, et al. Clin Exp Nephrol. 17: 877-81, 2013. Uemura O, et al. Clin Exp Nephrol. 18: 718-25, 2014.)。

 これらの検査の結果を総合的に判断しながら、必要時には腎生検を行い、確定診断・治療を行います。

おわりに

 学校検尿はESRDに至るかもしれない腎疾患の早期発見・治療に貢献しています。このシステムをより生かすために、本マニュアルの活用が望まれます。
 尚、尿糖も学校検尿での検査項目ですが、今回は割愛しました。陽性の場合は、日本糖尿病学会/日本小児内分泌学会編『小児・思春期糖尿病管理の手引き』 (2011年)をご参照ください。