仙台日赤医療集談会

「衝撃波を用いた再生医療 ~狭心症・下肢虚血・皮膚潰瘍に対する新しい低侵襲性治療~」

東北大学大学院 循環器先端医療開発学寄附講座 准教授 伊藤 健太

我が国では、高齢化や食生活の欧米化に伴い、虚血性心疾患患者数が増加してきています。これらに対する標準的な治療法(①薬物療法、②カテーテル治療、③バイパス手術)で十分な改善が見込めない重症例も増加しており、新しい治療法の開発が望まれています。

私達は、培養細胞や動物を用いた基礎研究の成果をもとに、低出力体外衝撃波治療を開発しました。この治療法は、非常に弱い出力(尿路結石破砕治療に用いられる出力の約10分の1)の衝撃波を、心臓の血液循環が悪い部分に照射することで、血管新生を促して血液循環を改善させる治療法です。重症労作性狭心症さんに対する治療では、図1のように、衝撃波発生ヘッドを患者さんの胸に当て、装置に内蔵された超音波診断装置で心臓を観察しながら衝撃波を照射します。1ヵ所につき200発の衝撃波を約40ヵ所照射する治療を、隔日で計3回行います。

2003年に開始した第1次臨床試験では、全例で狭心症症状が軽減し、負荷シンチグラフィーで評価した心筋血流も改善しました(図2)。

2005年に開始した第2次臨床試験(プラセボ対照比較試験)では、治療3ヵ月後には、自覚症状や運動耐容能が改善し、心臓の働きも改善しました。一方、これらの効果はプラセボ治療の前後では認められませんでした。また、副作用も認めませんでした。以上の良好な結果により、重症狭心症を対象とした低出力体外衝撃波治療は、2010年に厚生労働省より先進医療として承認されました。欧州では、既に医療機器としての承認を得ており、世界で5000例以上の狭心症患者に対して治療が行われています。

この治療法は、低出力の衝撃波を体外から照射するため、麻酔や開胸手術などといった侵襲的な処置が不要であることから、高齢者に対しても身体的負担が少ない治療法です。さらに、他科の先生方と共同研究を行い、下肢閉塞性動脈硬化症や強皮症に伴うレイノー症候群に対しても、有効であることを確認しており、今後、幅広い疾患への臨床応用が期待される治療法です。引き続き、皆様のご協力のもと、ひとりでも多く患者さんの症状や予後を改善すべく、研究を続けて参りたいと思います。