医療集談会

第131回仙台日赤医療集談会<12月4日>

産婦人科腫瘍と臨床試験

第一産婦人科副部長 大槻 健郎

皆様は広告などで末期がんがアガリクスやプロポリスで治ったという体験談を目にしたことがあるでしょうか。アガリクスやプロポリスなどは補完代替療法・民間療法と言われ、がん等に対して使用すると効果がある患者さんもいれば効果がない患者さんもいます。

一方、病院で行われる抗がん治療としては手術、抗がん剤や放射線治療などがありますがこれらの治療も必ずしもすべての患者さんに効果があるとは限りません。それでは補完代替療法と病院治療の違いはどこにあるのでしょうか。
病院では健康保険で認められていないアガリクスやプロポリスなどを処方することができません。厚生労働省では保険治療として新しい治療を認めるかどうかを臨床試験結果の有無、内容によって審査しています。臨床試験はヒトを対象に何らかの治療効果を評価することを目的に計画された研究であり、患者さんにご協力いただいて行うものです。
病院で行える治療はこのような試験結果に基づいて許可されたもののみになります。補完代替療法は現在までに大規模な臨床試験が行われていないため健康保険では認められていません。新薬が研究開発されて病院で使用できるようになるまでにまずは基礎研究として医薬品の基となる新規物質の合成・発見が行われます。

次に非臨床試験として新規物質の有効性と安全性を確認する動物実験が行われます。その後ヒトを対象とした有効性と安全性の試験として臨床試験が行われますが、多くの場合第1相から第3相試験にわかれ徐々に多くの患者さんが対象となっていきます。
主に第3相試験として行われるのがランダム化比較試験です。これは結果の偏りをなるべく減らすため患者さんを無作為に新治療群と比較対照群(今までの標準治療群やプラセボ(偽薬)群)とに振り分けて実施する臨床試験です。
医師、患者さんともに治療内容を選ぶことができないことや場合によってはプラセボという偽薬にあたる可能性もあるため人体実験ではないかとの指摘もあります。しかし治療内容を選べるようにすればどちらかの治療にのみ偏ってしまったり、新薬の効果と思っていたらプラセボ効果という偽薬でも病状が良くなってしまう治療効果と変わりなかったりと医学的に正しい結果を得られなくなります。第3相試験で現在の標準治療より有効であるとなれば保険治療として承認されどの病院でも皆様に対して使用することができるようになります。

このような臨床試験の結果に基づいて婦人科がん(子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんなど)の診療も日々進歩しています。子宮頸がんはヒトパピローマウィルスの感染によって発症することがわかってきたため、このウィルス感染を予防するワクチンが使用できるようになりました。ウィルス感染前の発がん予防効果は高いのですが臨床試験時には想定されなかった副作用の可能性があるため現在は慎重に使用することとなっています。子宮体がんの手術後治療は欧米では放射線治療が中心であり日本でも行われてきました。
最近では抗がん剤の臨床試験が多数行われ有効性と安全性の点から抗がん剤が治療の中心となってきています。卵巣がんは臨床試験結果から多くの抗がん剤が使用できるようになってきています。さらに最近の臨床試験結果から新しいタイプの抗がん剤である分子標的薬も保険診療として認められています。

新しい治療を病院で行うためには臨床試験が不可欠であり患者さんの協力が必須です。そのため医師から臨床試験登録を勧められた場合にはぜひご検討いただけるように宜しくお願いします。