診療科から

泌尿器科部長 太田 章三

前立腺肥大症について

 トイレの回数が増えたり、尿の勢いが弱くなったりする事に悩んでいる男性は多いと思います。これには前立腺肥大が関与します。
前立腺は膀胱の出口で尿道を取り囲んでいます。このため、前立腺が肥大すると尿道が圧迫されて、排尿に関わる症状が出現します(図1)。

図1

「尿の勢いが弱い」「尿が出始めるまで時間がかかる」などの排尿症状、「頻尿」「夜トイレに何回も起きる」「急に我慢できないような尿意を催し、漏れることもある」などの蓄尿症状、「尿が残っている感じ」「排尿後下着をつけると尿が漏れて下着が汚れる」などの排尿後症状がみられます。

また飲酒や風邪薬の服用により、膀胱内に尿がたまっているのに、尿が出せない苦しい状態(尿閉)になる事があります。
さらに進行すると、残尿が増え、常に尿が漏れたり、尿路感染を起こしやすくなったりします。腎臓からの尿の流れが悪くなり腎臓が腫れて腎不全を起こす事があります。
自覚症状は国際前立腺症状スコア(IPSS)を用いて評価します(図2)。

図2

肥大症の程度、残尿の程度などを超音波検査で評価します。
前立腺がんとの鑑別に血清PSA(前立腺特異抗原)測定を行います。正常値は4ng/mL未満です。PSA4〜10ng/mL(グレーゾーン)では20〜30%で前立腺癌が認められます。PSA10を越えると前立腺癌の可能性が高くなります。前立腺肥大症の治療には、薬物療法、手術療法、保存療法の3つがあります。まず薬物療法が行われる事が多く、薬物療法でコントロール困難なとき、合併症を起こすときに手術療法を行います。

薬物療法には、α1遮断薬(尿道の圧迫を解除し、尿が通りやすくする薬)、5α還元酵素阻害剤(前立腺を小さくし圧迫を軽減する薬)、PDE5阻害剤、生薬、漢方薬などがあります。
手術療法は、尿道から内視鏡を挿入し、肥大した前立腺を尿道側からくりぬくように切除する方法です。保存療法には生活指導などがあります。水分を摂りすぎない、コーヒーやアルコールを飲み過ぎない、刺激性食物の制限、便通の調節、適度な運動、長時間の座位や下半身の冷えを避ける、などの生活の注意は症状緩和に役立ちます。

前立腺肥大症と前立腺がんは同じ前立腺から発生しますが、性質も異なる別の疾患です。前立腺肥大症は良性の疾患で、がんになる事はありません。症状は両者とも似ていますが、前立腺がんは初期にはほとんど自覚症状がないので注意が必要です。血清PSA検査が
重要になってきます。定期的に、検診などでPSA検査を行うよう心がけてください。