医療集談会

第124回仙台日赤医療集談会<7月22日>

「冠動脈形成術(PCI)の現在・過去・未来」

循環器内科部長 杉村 彰彦 (すぎむらあきひこ)

 冠動脈形成術(PCI)は1977年に世界で第1例目が施行され、現在では虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)に対する治療の大事な一翼を担っています。当初の風船治療に加え、1994年金属の格子であるステントが認可され、抗血小板薬の2剤併用療法の有効性が確立されて以来、PCIにおいてステントなしの治療は考えられないまでになりました。しかし治療後の再狭窄(再治療率20—30%程度)という難題が、長い間解決されない問題点として残っていました。

  再狭窄の機序が新生内膜の増殖であることから開発されたものが、免疫抑制剤や抗腫瘍物質でコーティングされた薬剤溶出性ステント(DES)です。2002年に登場して以来、このステント留置術は再治療率が5%程度となり、画期的な治療法として市場を席巻しました。しかしその後、抗血小板薬を中断した際にステント血栓症(心筋梗塞になる)を引き起こす報告が相次ぎ、抗血小板薬を長期に飲み続けなければならないことが判りました。ステントや薬剤の改良により、血栓症は減少傾向にありますが、他にもDES留置後は血管の反応が正常ではないなど問題点が指摘されました。

  冠動脈形成術の進歩は他に、心筋梗塞の際に血栓を吸引する器具や、硬い病変をドリルで削る器具(ロータブレーター)の開発、心臓CTで血管の状態を調べることができるようになるなど、他にも様々な点が挙げられます。一方、DESの登場で、動脈硬化部分をカッターで削り取る器具(DCA)のように使われなくなった物もあります。いずれにしても、冠動脈疾患での死亡率は種々の科学技術の進歩の恩恵を受け、確実に減少しています(図1)。

そうした中で、現在治験中で最も注目を集めているものが、薬剤溶出性の生体吸収ステント(BVS)です(図2)。

これはステント本体がこれまでの金属ではなくポリ乳酸でできており、留置後約2年かけてステントが代謝され消失します。3年後には血管のみとなります。さらに金属製のDES留置後と異なり、治療後の血管反応は正常に保たれているという利点があります。金属製のステントと比べて、冠動脈内を通過させるのが難しいことや、留置後の状態を確認しにくいなどの問題点はあるものの、ステントが最終的に残らず、本来の血管のみになることは非常に大きなメリットであり、世界中で発売が待たれています。

(スライド提供:東北大学病院 循環器内科 高橋 潤 先生)

 

「出生前診断に関する最近の話題~いわゆる「新しい出生前診断」について

第二産婦人科部長 武山 陽一

昨年夏に報道された「新しい」出生前診断がようやく本邦でも開始されました。今回はその概略について説明したいと思います。
正式名称は「非侵襲的出生前遺伝学的検査」で、NIPTと略されます。対象とする疾患は胎児の染色体異常で、その代表がダウン症です。

ダウン症は21番の染色体が1本多い染色体異常で、母体の出産児年齢が高くなるほど発症率が高くなることが知られています(表1)。

以前より羊水穿刺などにより出生前診断が行われていましたが、侵襲的検査であるため流産させてしまう危険を伴っていました。NIPTでは母体の血液中に存在する胎児由来のDNA断片を解析することで胎児の染色体異常の有無を判定するため、胎児に対する危険はまったくありません。検査を行っているSequenom社のデータによると、感度(ダウン症の児を正しくダウン症であると判定する確率)、特異度(ダウン症でない児を正しくダウン症でないと判定する確率)ともに99%以上という高い精度をもっています。この数字がマスコミでセンセーショナルにとりあげられ、一人歩きし始めましたが、実際に検査が陽性となったときにどの位の確率でダウン症か(陽性的中率)というと、計算上50~90%に止まります(表2)。

つまり、この検査では確定診断はできず、陽性となった場合は羊水穿刺などによる確認が必要となります。検査を受ける前に、このような事柄についてきちんと理解していただく必要があり、そのためには遺伝カウンセリングが必須となります。日本においては未だカウンセリング体制が整っていないため、検査を受けられる施設が限定されています。今後、検査の需要が増えると予想されるため、カウンセリング体制の整備が急務といえます。

※なお、この検査は当院では行っておりません。詳細は産婦人科にお問い合わせください。