仙台赤十字病院広報誌-診療科から-外科

外科副部長 小林 照忠 (こばやし てるただ)

大人のそけいヘルニアについて

そけいヘルニアとは?
  ある臓器が、体の弱い部分やすき間を通って、本来の位置から他の部位へ飛び出す状態をヘルニアといいます。ヘルニアは体のいろいろな場所でおこりますが、足の付け根付近(鼠径部(そけいぶ)と呼びます)に生じたものがそけいヘルニアで、「脱腸」とも呼ばれます。子供の病気と思われがちですが、実際には大人の方がずっと多く、日本では年間15万人前後が手術を受けています。

症状
  お腹に力が入った状態、例えば尿や便を出すために息む、咳をする時などに、鼠径部の膨らみに気付きます。最初は小さな軟らかい膨らみで、仰向けに寝たり手で押さえると引っ込みます。膨らみが大きくなると引っ込みにくくなり、重苦しさや鈍い痛みを感じるようになります。膨らみがはっきりしなくても、鼠径部に違和感や痛みがある場合はそけいヘルニアの可能性があります。
  ヘルニアの膨らみが飛び出したまま戻らなくなった状態を「かんとん」と言い、強い痛みや吐き気を伴います。かんとん状態を放置すると生命にかかわりますので、早急に病院を受診して下さい。

原因とタイプ
  お腹の壁は筋肉と筋膜で支えられていて、鼠径部では筋肉と筋膜が複雑に重なりあっています。生まれつきある小さいすき間や、大人になって出来た弱い部分が穴(ヘルニア門と言います)になり、そこから腹膜や内臓が飛び出してくるのが鼠径ヘルニアで、ヘルニア門の場所により、内鼠径、外鼠径、大腿の3つのタイプがあります。

治療法
ヘルニアは、組織そのものが弱くなって起こるので、薬を飲んでもトレーニングで筋肉を鍛えても治りません。手術でヘルニア門を塞ぐことが、唯一の治療法です。自覚症状があれば手術を受けた方がよいでしょう。そけいヘルニアは良性疾患ですが、ときに「かんとん」をおこすことがあり、いつ起こるのか予測できません。かんとん状態では腸閉塞や腹膜炎をおこすので、救命のために緊急手術を行いますが、飛び出した腸を切除することもあります。

手術と麻酔
当科では人工膜を使用した手術を行っています。ヘルニア門を塞ぐとともに、お腹の壁を補強して新たなヘルニアの発生を予防するもので、2通りの手術法があります。患者さんの状態と希望をもとに、適した手術法、麻酔法を決めています(表)。
最近は腹腔鏡手術の割合が増えています。全身麻酔が必要ですが、お腹の中からヘルニア門を観察するので、診断が確実で修復を確認出来るためです。図は腹腔鏡で見たヘルニア門です(○で囲まれているのがヘルニア門です)。

 

 

入院について
入院は原則的に手術前日ですが、当日入院も可能です。退院は手術翌日以降に可能で、2012年に手術を受けた143人の入院期間は、3日以内が15人、4〜5日が57人でした。半数の方は術後3日以内に退院されました。

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