医療集談会

第121回仙台日赤医療集談会<1月22日>

佐藤 尚明

「胎児心拍数モニタリングの新展開 ~母体腹壁誘導胎児心電図研究の取り組み」

 胎児の元気さの診断、つまりお母さんのおなかの中の赤ちゃんの元気さを正しく知ることは産科医にとって最も重要な課題の一つです。
歴史的には19世紀のトラウベ聴診器による胎児心拍の確認に始まり、現在ではノンストレステストの概念に基づく分娩監視装置による胎児心拍数モニタリングが広く世界中で行われています。ノンストレステストの目的は胎児の状態が良好であることを証明することですが、この検査は偽陽性が50~70%と高いことが大きな問題です。偽陽性とは検査で元気がないと診断された赤ちゃんが、生まれてきたら実は元気だったということです。そればかりか分娩時の手術的介入(帝王切開分娩)を増加させる一方で、周産期死亡率や新生児中枢神経系障害、脳性麻痺の予防には寄与していないことが次第に明らかになってきました。これらより、胎児心拍数モニタリングに代わる新しいモニタリング法の開発や、付随した手段が望まれています。

胎児心電図は胎児に負担を与えずに胎児情報を獲得する手段として、クレーマーによって1906年に初めて計測されました。同様の研究が1960年代まで続けられましたが、胎児の心拍数を計測するのがやっとでした。主要な問題点は胎児心電図信号が母体心電図信号、母体腹部の筋肉活動、外部からのノイズに比べ、1/25~1/100低電位(極めて小さい信号で脳波より低電位)であり、これらを含んだ複合信号から胎児心電図信号をいかに分離できるかが大きな課題でした。

2005年より東北大学産婦人科では胎児心電図装置の開発に取り組み、数々の新しい技術を開発し、臨床現場での使用に耐えうる精度の高い胎児心電図計測を可能にしました。今回、母体腹壁誘導胎児心電図装置開発の歴史と現状について説明し、検査法の実際、臨床応用について紹介します。また今後の展開として胎児モニタリング検査としての可能性についてもふれたいと思います。