日赤医療集談会

第117回仙台日赤医療集談会 (平成24年5月23日)

第一外科副部長 小川 仁

 潰瘍性大腸炎とクローン病は「炎症性腸疾患」と総称され、厚生労働省の特定疾患に指定されている、いわゆる難病です。腹痛や血便、発熱、体重減少などの症状がみられます。もともと欧米に多い病気ですが、日本でも患者さんは増え続けており、現在国内には潰瘍性大腸炎10万人以上、クローン病3万人以上の患者さんがいます。患者数の増加には食生活を中心とする生活環境の欧米化が関係していると考えられています。

 潰瘍性大腸炎、クローン病ともに20歳代前半を中心とする若い人に発症することが多く、また治療は長期間にわたるため社会的な損失の大きい病気ですが、いずれも原因不明の病気であり根治(病気の原因を取り除いて完全に治すこと)ができません。従って病気の勢いを抑えて、健康な人と同じように生活や仕事ができるようになることが治療の目標となります。治療は腸の炎症を抑えるための薬物療法が中心になります。粘膜保護剤や副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤などの従来の治療に加えて、最近では抗体療法や血球除去療法などの新しい治療法も広く行われるようになっています。しかし薬物療法で病気の勢いをコントロールできない時や、副作用のために薬が使えないときなどには手術が必要になります。潰瘍性大腸炎では約3割、クローン病では7〜8割の患者さんが手術を受けます。
潰瘍性大腸炎では大腸をすべて摘出して、小腸と肛門をつなぐ手術(大腸全摘・回腸嚢肛門吻合手術)が最も多く行われています。潰瘍性大腸炎は大腸におこる病気ですので大腸を全て取り除くことで治りますが、手術後に排便回数が多くなることや、また肛門の近くの小腸に原因不明の炎症(回腸嚢炎といいます)が起こることがあるなどの問題があります。クローン病に対しては炎症のひどい部分の腸を切除したり、狭くなって通りの悪くなった腸を拡げる手術などが行われます。しかし悪い部分を全て切り取ったとしても再発することが多く、半数以上の患者さんが再手術を必要とすることがクローン病に対する手術の最も大きな問題となっています。

 これらの問題を解決するために、そして根本的には病気の原因と明らかにすることで炎症性腸疾患を「治る病気」にするために、日本を含む世界中の研究者が努力しています。


潰瘍性大腸炎(大腸)


クローン病(小腸)

 

第118回仙台日赤医療集談会 (平成24年7月19日)

循環器科副部長 大橋 潤子

「心不全について」

 人間が生きていくためには、体の各部分に十分な酸素と栄養が行きわたることが必要です。酸素と栄養を運ぶのが血液で、その血液を循環させるポンプの働きをするのが心臓です。心臓は1分間に4~5Lの血液を全身に送っています。
心筋梗塞・心筋症・弁膜症・不整脈などの病気で心臓のポンプ機能が落ちてしまい、体が必要とするだけの血液量を送れなくなってしまった病態を「心不全」といいます。体が必要とする血液量を「需要」、心臓が体に送っている血液量を「供給」と考えると、供給が需要を下回ったときに心不全になるのです。よって心不全の治療は、需要を減らしつつ供給を増やすことが、目標となります。

 「需要」が増える代表的な病態は、感染症・貧血・甲状腺機能亢進症などです。そのため、心臓に病気を持っている患者さんは、上記のような病態にならないよう日頃から注意しなくてはなりません。また、「供給」が減る病態としては、高血圧・水分過多摂取などがあります。よって、血圧のコントロールと適度な水分制限が必要になります。

 心不全になると、労作時に息切れが出現するようになり、さらに悪化すると横になると呼吸が苦しくなり座った方が楽になる症状(起坐呼吸)が出てきます。また、体全体もむくんできます(全身浮腫)。心不全を疑った際には、心電図・胸部レントゲン・血液検査・心臓超音波検査を行います。これらの検査にて、心不全の原因となった病気(基礎心疾患)が何であるか、また心不全を誘発した病態(誘因)は何であるかを調べ、治療を行います。

 心不全の治療は、基礎心疾患と誘因の治療を優先しますが、薬物治療(アンギオテンシン変換酵素阻害薬もしくはアンギオテンシンⅡ受容体遮断薬、交感神経β受容体遮断薬、利尿剤など)と血圧コントロール、塩分制限(1日7g目標)、飲水制限を継続することになります。