日赤医療集談会

アトピー性皮膚炎最近の議題

皮膚科部長 田畑 伸子

 アトピー性皮膚炎は日常的な疾患であり、外来にもたくさんの患者さんがいらっしゃいます。しかし、いまだに原因や起こっていることが十分には解っていない病気の一つです。
 今回は比較的確かなこととされてきているバリヤー機能やかゆみの異常という観点からアトピ一性皮膚炎の新しい知見についてお話いたします。
 最近アトピー性皮層灸の3割ほどの人に、皮膚の天然保湿囚子の一つである、フィラグリンという蛋白の生成に関係する遺伝子に変異があるということがわかってきました。フィラデリンは皮膚バリヤー機能の中心的役割を果たしており、生成が不十分であると角層のバリヤー機能が低下して、ダニやホコリなどの大きな蛋白が入りこみやすくなったり、水分が蒸散しやすくなったり、角層に水分を保持させておくことができなくなったりします。いろいろな蛋白が入りこむと、それらに対するアレルギーを獲得し易くなりますし、皮膚が乾燥するとかゆみの原因になります。この遇伝子変異を持つ愚者さんでは、角層のバリヤー機能の低下と皮膚炎の重症度は相関します。今まで、アトピー性皮膚炎になり易い体質というものがあるらしいのは解っていましたが、はっきりと一つの遺伝子変異との関連が示唆されたのは初めてです。将来は、新生児でこの遺伝子変異を検査することで、アトピー性皮膚炎の発症リスクを予測し、変異を有する子供に対してバリヤー機能を補う、アレルゲン暴露を避けるなどの積極的予防策を講じることができるかもしれません。
 アトピー性皮膚炎のかゆみは激しくつらいものです。最近、乾燥した皮膚やひっかいて傷ついた皮膚では、かゆみを感じる神経が増加し、しかも表面に伸びてきていることが解ってきました。正常の表皮角化細胞は、神経を伸ばしたり分枝させたりする因子をバランスよく分泌して、神経があるべきところに伸びていくように制御しています。乾燥、掻破などで表皮が壊されると、この分泌のバランスが崩れて神経がどんどん伸び、皮膚の浅いところまで到達します。かゆみを感じる神経が表皮内に入り込むと、非常にかゆみを感じやすくなります。アトピー性皮膚炎ではかくことでさらに表皮が壊れ、さらにかゆみに敏感になるという悪循環ができあがっています。
 では、このような悪循環を断ら切るためにはどうしたらよいのでしょうか。当たり前のようですが、おおもとである皮膚炎を抑えるしか方法はありません。つまり、炎症を抑える抗炎症療法がアトピー性皮膚炎治療の基本です。現在では、日本皮膚科学会のアトピーー性皮膚炎治療ガイドラインで治療の大筋が決められています。適切な強さのステロイド外用剤を適切な量きらんと塗ること、これが最も大切です。外用量や回数が少ないと十分な抗炎症効果が得られず、悪循環を断ら切ることができません。炎症が十分に沈静化したら保湿剤に移行し、抗炎症剤の外用回数を減らしていきますが、また悪化したら外用を再開する(リアクティブ療法)というのではなく、悪化しなくても週に2~3回あるいは1、2回、定期的に抗炎症剤の外用を続ける(プロアクティブ療法)ほうが再燃しにくく、結局抗炎症剤の量が少なくてすむとうことがわかってきました。
 以上、角層バリヤー機能と、かゆみの神経について最近認められつつあることを説明しました。新しい知見を治療に生かしていけるように皮膚科全体でがんばっています。

 

 

新しい先生の紹介

第一外科副部長 小川 仁

 平成23年10月から仙台赤十字病院・外科に勤務致します小川 仁です。山梨県出身、妻一人子二人。平成4年医師免許取得、会津若松の竹田総合病院で3年間の初期研修後、東北大学第一外科に入局し9月まで在籍しておりました。これまでは潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の外科治療を中心にやってきましたが、赤十字病院では多彩な疾患の外科治療を一から学び直したいと思います。よろしくお願い致します。