院長室だより

院長 桃野 哲(ももの さとし)

東日本大震災で亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

 3月11日午後2時46分に発生したマグニチュード9.0の大地震と所によって20mを超える大津波、皆様は何処でどのように体験されたでしょうか。さぞ恐ろしい思いをされたと思います。東北地方の太平洋沿岸は、この津波により大きな被害を受け、死者が1万人余以上で、行方不明者を合わせると2万6千名を越えるとの報道です。日本赤十字社では、発災直後から救護班の出動と被災地への救護品配送を開始し、近衞忠煇日赤社長は見舞いと視察のために石巻地方の被災地入りしました。日赤で災害義援金の募集を始めたところ、既に国内、海外から数百億円の善意が寄せられております。また、津波被害の甚大な石巻地区で、被害を免れ病院機能が維持されている石巻赤十字病院は、被災者の診療と救護の前線基地として大変重要な役割を果たしています。さらに、全国の赤十字病院から出動した救護班が、宮城、岩手、福島などの沿岸地域で救護所を巡回するなどの救護活動を継続しています。
 津波で流されてそっくり消えた町、瓦礫の中にコンクリートの建物がポツンと残った土地をみると、復旧迄には気の遠くなる時間と資金がかかりそうです。被災地では未だ救護所暮らしで寒い夜を過ごしている方が多数おられ、行方不明の肉親を案じ探している方もおられます。少しでも入所している被災者の肉体的、精神的負担を減らすために、一日も早い暖房の確保、空いている住宅への移動や速やかな仮設住宅の建設が望まれます。


当院の被災状況など

 当院では、亡くなるとかケガをした職員はおりませんでした。しかし、残念ですが、数名の職員が家族を津波で失いました。謹んでお悔やみ申し上げます。
 電気・ガス・水道のライフラインが止まりましたが、八木山地区では建物の倒壊や、電柱・電線、道路などへの被害は少なかったようです。病院建物の被害は、壁にヒビが入りタイルが剥げ落ち、本館と増築棟との接続部が破損したなどで、水道設備が当院への引き込み管が破損し給水を受けるには修理が必要でした。建物の仮復旧や修理は、当院を建築した会社が直ぐに来てやってくれました。病院に先ずということでボイラーへの中圧ガスは24日に復旧しましたが、調理などのガスは未だで、水道の復旧が29日と遅くなりました。地震で被害を受けた施設から透析患者さんを受けて使用量が増えた水の確保が心配でしたが、水道局から優先的に給水車で給水してもらって透析は出来ましたが、常にタンクの水は少ないので、申し訳ないと思いつつ入院患者さんには洗顔や入浴を我慢していただくなど不自由をお掛けしてしまいました。ライフラインは自家発電や給水車のおかげで最低レベルを維持できました。しかし、通信がダウンし、衛星電話や災害時の無線電話を準備していて使えたもののなかなか通じないので、携帯電話やE-メールの便利さに慣れきった我々には、あたかも拷問されているように感じられました。
 患者さんの給食は、最初の数日間は非常食の乾パン、缶詰やペットボトルの水等、災害時の保存食品で我慢していただきました。これらが底をつきそうになって困りだした頃から、全国の赤十字病院からおにぎり、パン、飲料水、レトルトのごはんやカレー、カップ麺などを届けて戴き、阿部蒲鉾店さんから笹かまぼこ、兵庫県からは大量の飲料水や非常食品を、市川市の越中屋給食センターさんに弁当を注文すると社員や地域の皆様からのご厚志によるお米や調理したてのカレーなどを一緒に届けていただきました。これらの善意の品物は、食材が不足がちの患者給食や院内に泊まり込みの職員の食事に充てて、大いに助かりました。有難うございました。
 今回の地震は、揺れが大きかったわりに病院建物への被害が軽く済み、職員と委託職員の皆様に快くご協力していただいた結果、地震直後から診療機能をかなり良好に維持出来ましたし、救護班出動や石巻病院への応援も出すことができました。また、災害時ということで3月末に退職される職員の皆様も、最後の最後までしっかり勤務してくれました。ご協力いただいて有難うございました。皆様に厚く御礼申し上げます。

新年度を迎えて

 地震でてんやわんやの年度末でしたが、新年度も当院では、43人の新しい仲間を迎えることが出来ました。また、4月以降、少数ながら医師の人事異動がありますので、スタッフが慣れるまで、皆様にご迷惑をお掛けすると思いますがご容赦下さい。新年度も、私共は新たに加わった仲間と共に研鑽に励み、当院をご利用いただく皆様に安全で安心な医療を進歩に遅れることなく提供し、職員が誇りを持って働ける病院を目指します。周産期医療では地域の核となり、これ以上はご免被りたいのですが地震などの災害救護医療では、今回の教訓を生かして地域の皆様や行政・医師会などと協力して参ります。