日赤医療集談会

第107回仙台日赤医療集談会

 平成22年7月28日(水)

「腹腔鏡下手術について」

副院長・外科部長 中川 国利 (なかがわ くにとし)

【はじめに】
 腹腔鏡下による手術は、1980年世界で初めてドイツのSemmにより虫垂切除に導入されました。そして日本では1990年に取り入れられ、手術手技の確立と機器の開発に伴い急速に普及しました。現在では胆嚢結石症を中心に、ほぼ全ての消化器疾患に応用されつつあります。

【腹腔鏡下手術の利点と欠点】
  利点としては開腹手術と比較して、①小さな手術創で行うため美容上優れていること、②手術侵襲が少ないため、術後の疼痛が軽度であること、③腸蠕動運動などの術後回復が早く、早期の食事摂取、さらには早期の退院や社会復帰が可能であること、④術野をモニターテレビで拡大するため、視野が良好です、などが挙げられます。一方、欠点としては、①手技が煩雑で、特殊の道具を要すること、②開腹既往例では癒着剥離を要し、炎症例や肥満例では手術操作が困難であること、などが挙げられます。

【当院における腹腔鏡下手術】
 1991年より当科においても腹腔鏡下手術を積極的に施行し、2009年末までに胆嚢摘出術4,094例、大腸切除術255例、虫垂切除術226例など、計5,017例に達しております()。なお外科における総手術件数は年間650件ですが、うち腹腔鏡下手術は約半数を占め、手術侵襲の少ない手術に努めております。

【胆嚢摘出術】
  代表的な疾患である胆石症について紹介します。胆石症はその存在部位により、胆嚢結石、総胆管結石、肝内結石に分類されます()。腹腔鏡下手術は一般に胆嚢結石例に行われますが、当科では急性および慢性胆嚢炎例、上腹部開腹既往例、総胆管結石例を含む全ての症例を対象としております。開腹移行率は1.7%と全国平均の5.5%より低率で、主な術中偶発症である胆管損傷率も0.18%と全国平均の0.78%より低率です。

【今後の展望】
 腹腔鏡下手術は導入初期には手技が容易な良性疾患に限定されていましたが、近年は胃癌や大腸癌などの悪性疾患にも行われています。さらに膵臓や肝臓疾患にも応用されつつあり、当科でも積極的に取り組んでおります。
 またさらなる美容を求めて単孔で行う手術が注目され、当科でも施行しております。最近は口、膣、肛門などの自然孔から行う経管腔的内視鏡手術、肥満症例の増加に伴い腸管切除や胃バンデング(注)、さらには遠隔操作でも行うことができるロボットによる手術なども試行されつつあります。
(※注:胃バンディングとは胃の上部にバンドを巻きつけて食事が摂れなくする手術です。)

表:仙台赤十字病院における腹腔鏡下手術

 

図:胆石症