診療科から

血は「心」?

血液内科部長  福原 修 (ふくはら おさむ)

 「血液」とはいったい何でしょう。まずは辞書を開いてみると、「血なま臭い」「血の雨が降る」などは出血の様子ですし、「血統書」「血は水よりも濃い」などは遺伝的な事を言うとあります。「血湧き肉躍る」「熱き青春の血潮」などは情熱的な様子を、「血と汗との結晶」「血判状」「血税」などは必死な思いを表しています。「血が通う」「血も涙もない」などは真心や誠意を表します。こうして見ると”血”は「心と情」の代名詞です。

  「血液」は液体(タンパク質などを含んでいます)の中に細胞がぷかぷか浮かんいるもので、それが全身の血管の中を流れています。血液細胞としては赤血球・白血球・血小板があり、骨の中心部にある骨髄ですべて作られています。その中では赤血球が圧倒的に多いため血液は赤く見えるのです。リンパ球も元をたどれば骨髄生まれです。人間の体には「免疫」というしくみがあり自分の体を守っていますが、白血球やリンパ節はその中で重要な役割をはたしています。血液の細胞はいずれも数はだいたい決まっていて、多過ぎても少な過ぎても異常ということになり、そういう患者さんが血液内科にやってきます。赤血球が減っている状態を「貧血」と言い、立ちくらみ・疲れやすさ・動悸などを起こします。出血によって貧血になっている場合はその原因ごと外科や婦人科だったり肛門科だったりします。また、血が止まりにくかったり出血しやすくなったりする場合も血液内科が扱います。

  血液内科の大きな仕事は白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫などの悪性腫瘍を治療することです。こうした病気になると血液が減ったり血が止まらなくなったり免疫が弱る場合があり、抗がん剤を使ったり骨髄移植をしたり輸血をしたりします。血液は全身をめぐってますので、血液内科医は全身の症状に対応しなければなりません。とくに免疫が弱った状態では細菌やウイルスによる感染症をしばしば起こしますし、また血の固まり方がおかしくなったりもしますので、そうした状態の治療も行います。

  血液の悪性腫瘍の中で一番多いのが悪性リンパ腫で、毎年人口10万人あたり10人程度が発病します。仙台市の人口が約100万人とすると毎年100人前後という計算になります。多いなぁと思われましたか? 血液の病気は患者さんの数からいうと高血圧や消化器病のように多くはありませんので、血液内科はどの病院にもあるわけではなく、仙台市内でも数カ所の病院にしかありません。

  血液病は内科の中でも研究の進歩がたいへん速いの分野で、画期的な薬が作られることもめずらしくありません。今では急性白血病の中には治りやすいものもありますし、10年前までは不治の病だった病気が長生きできるようになっています。血液は医師としても興味のつきない分野でもあるのです。