第92回 日赤医療集談会その2

「周産期医療統計から観た宮城県の周産期医療の現状と問題点」

仙台赤十字病院 総合周産期母子医療センター長 中江 信義

 宮城県内の周産期医療の現状調査は1982年4月14日の仙台赤十字病院周産期センターの開設を契機に、仙台市医師会新生児救急対策委員会を中心に、1983年からほぼ毎年行われてきました。今回の調査は宮城県周産期医療協議会より周産期専門施設として指定された公的な12施設(仙台日赤、宮城県立こども、東北大学、気仙沼市立、大崎市民、石巻日赤、東北公済、仙台市立、仙台医療センター、NTT東日本東北、みやぎ県南中核、公立刈田病院)と現実にお産を扱っている基幹的な6病院(登米市立佐沼、坂総合、光が丘スペルマン、東北労災、宮城社保、スズキ記念病院)の計18施設で、2006年1月1日より12月31日までの一年間に扱われた症例について行われました。
12の周産期専門施設での分娩総数は6271件で、NICU入院数は過去最高の1,407例、そのうち院内出生例が1,178例(84%:母体搬送例261例、母体紹介症例200例)、院外出生紹介症例221例(16%:ドクターカーによる搬送症例は47例)でした。24時間以上の人工換気症例も過去最高の281例でした。その他、NICU入院以外の産科あるいは新生児室入院扱いの軽症例も614例いました。
一方、その他の6つの基幹施設での分娩総数は2,641件で、扱われた異常新生児症例は369例でした。全例が院内出生例で、母体搬送例、1,500g未満の症例、人工換気症例、さらに、死亡例も認められず、軽症化が目立ちました。

周産期専門施設での治療成績は図に示したように過去最高の成績でした。全1,396例の死亡退院率は1.7%(24例)、1,000g未満の超低出生体重児でも10.1%(7/69)と非常に良好でした。死亡原因もほぼ半数の13例は複雑な先天性チアノーゼ性心疾患を含めた奇形症候群、染色体異常症や代謝異常症が占めていました。他の専門施設への依頼症例は、母体搬送に関しては134例あり、その内5例が県外の専門施設への依頼でしたが、県内で収容不能のために依頼されたのは2例のみでした。異常新生児に関しては119例で、県外への依頼症例は回復期に未熟児網膜症の専門治療のために依頼された2例だけで、急性期の症例はありませんでした。
以上のように2006年においては、重症を中心に診る仙台日赤、東北大学とこども病院の3施設と、中等症から軽症を複数の医師で集中的に診る仙台医療センター、そして、新たに加わった石巻日赤病院がオーバーベッドで無理をしながら運営され、かろうじて達成されたものと思われます。このことは2007年4月より新生児科医が転勤・不在となり、仙台医療センターが機能不全に陥ったことにより、再び収容不能症例の県外流出が増えたことからも明らかです。
宮城県内の周産期医療は現在、お産を扱う産科施設の著明な減少と集約化が急速に進行する一方、周産期専門施設においても医師不足と高齢化が進み、それに伴う世代交代の時期を迎えています。今後、安定した長続きする周産期医療システムを構築するためには、中心的な3施設以外に、もう1ヶ所、スケールメリットを活かし、24時間対応可能な、中等症から軽症例を中心に複数の専門医で診る15~20床規模の周産期センターの確保と、さらに、県北の地域周産期センターとして大崎市民病院の整備拡充を行い、整備済みの石巻日赤病院の地域周産期センターを加え、6ヶ所程度に再編・集約化を図る必要があると思われます。