第92回 日赤医療集談会その1

宮城県の産科救急ネットワーク

第一産婦人科部長
谷川原 真吾

 最近の分娩数は年々減少傾向にありますが、不妊治療の進歩などによりハイリスク妊婦や低出生体重児の割合は増加してきています。一方産婦人科医や分娩取扱施設の減少により地域での産科医療の崩壊が危惧されています。宮城県においては、平成11年には73か所あった分娩取扱施設が平成18年には55か所と約4分の3に減少し、この少ない施設で年間約2万件の分娩を取り扱っています。そして高次の産科医療が必要なハイリスク妊婦は、図に示したような産科救急ネットワークの中での連携により搬送され治療を受けています。
近年問題となっている未受診飛び込み分娩は、地域の中核病院10施設の集計によるとここ数年は年間40件程度であり、宮城県全体では年間約60件程度と推測されています。飛び込み分娩の数自体は少ないのですが、母体や胎児の情報がないため受け入れが困難なことが多く、また早産や新生児異常も多いため、妊婦さんには最低限の妊婦健診を受けていただきたいと考えています。平成20年度からは公費の健診助成制度が拡大されますが、これによってある程度の飛び込み分娩が減少できるものと思われます。

健診を受けている妊婦さんの高次施設への母体搬送は年間約300件で、その多くを仙台赤十字病院、東北大学病院、県立こども病院の3施設で受け入れています。これは70人に1人の妊婦さんが搬送を受けていることを示します。更に県内の受け入れ施設(特にNICU)に余裕がなく山形県や岩手県まで搬送される方も年間5名程度います。また産後の大量出血や合併症などにより救急救命センターへ搬送される褥婦さんは年間20名程度です。
しかしながら分娩にかかわる産科医の増加がすぐに望めるわけではありません。しばらくの間は医師の集約化で分娩施設を維持し、連携を密にすることで産科医療の質を下げないよう努力していく必要があります。これには医療現場の努力だけではなく、市民の皆様の理解と行政の援助が必要となってきます。当院は県内唯一の総合周産期母子医療センターとして、今後も「安全で快適なお産」を提供できるよう努力していきたいと考えています。