診療科から

仙台赤十字病院 循環器科副部長 金野 裕司

メタボリックシンドロームと循環器疾患

循環器疾患による死亡率は昭和40年以降、脳血管疾患、悪性新生物とならび死因の上位を占めています。死因の第一位は昭和56年以降悪性新生物で変わりませんが、昭和60年ころから循環器疾患による死亡率が脳血管疾患の死亡率を上回り、ここ10年では脳血管疾患による死亡率が減少傾向にある一方循環器疾患による死亡率は上昇傾向にあるといえます(図1)。

また平成17年の患者数では、高血圧性心疾患が782万人、心疾患が167万人と循環器系疾患が他の主要な疾患を大きく上回っており、これらの疾患に対する治療法のみならずその予防が近年ますます重要視されるようになってきています(図2)

メタボリックシンドロームという言葉を最近良く耳にします。メタボリックシンドロームには、脂質異常症、高血圧症、糖尿病など複数の因子を持った方などが当てはまります。その個々の因子はそのまま心血管疾患の危険因子であり、たとえ一つ一つの因子が軽症であってもそれらが複合的に存在することによって循環器疾患を発症する確率が相乗的に高くなり、その結果死亡率が高くなることが確認されています。日本におけるメタボリックシンドロームの状況は、平成17年の厚生労働省の調査によると20歳以上の男女のうち、男性45.3%、女性18.6%が「メタボリックシンドローム予備群」または「メタボリックシンドロームを強く疑われる人」となっており、40から74歳の男性においては2人に1人、女性の5人に1人が「メタボリックシンドローム予備群」または「メタボリックシンドロームを強く疑われる人」となっています。
  メタボリックシンドロームの人たちはどのような危険が高くなるのか具体的に見てみると、たとえば総コレステロール値(注:メタボリックシンドロームの診断基準は総コレステロール値ではなくHDLコレステロール値が用いられています)によって4階層に分類した場合、男性の場合では総コレステロール値が160mg/dl以下の人たちの冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞など)の発症率を1とすると、総コレステロール値が200~239mg/dlの人たちでは1.83、240mg/dl以上の人たちにいたっては4.87となることがわかっています。女性の場合でも男性ほど顕著でないもののやはり240mg/dl以上となると1.99と2倍近い発症率となっています(図3)

同様に正常の人に比べて糖尿病にいたらないまでも血糖が高い傾向にある人(耐糖能異常と呼びます)では、心疾患および脳卒中の発症率が1.9倍、糖尿病と診断されている人では3倍の確率で病気が発症してしまいます。さらに肥満、高血圧、高血糖、高コレステロール血症が一つもない人に比べて、これらの危険因子を2つ持つ人では心疾患及び脳卒中の起こる確率は9.7倍、3つから4つ持つ人ではなんと31.3倍に達するとされているのです(図4)。

また喫煙の習慣があれば心血管疾患の危険度は更に高まることが予想されます。
  これほど危険な状態であるメタボリックシンドロームではありますが、その予防は意外と身近なところにあります。簡単にいえば食事療法と運動療法が何よりの予防法です。日本の死因の2位である心疾患の予防のためにこれからすぐにでも出来るカロリー制限と適度な運動をいつも心がけたいものです。