診療科から

■飲酒と糖尿病

糖尿病代謝科 小竹 英俊
飲酒と糖尿病当院で実施している糖尿病教室では患者さんからいろいろな質問が寄せられます。その中でも、特に男性の患者さんからよく聞かれるのは、“どの位なら飲んでもいいのか?”といった飲酒についての質問です。

◆お酒の適量とは?

アルコール摂取は食道癌や大腸癌などのリスクを高める一方、適量であればからだによい面もあることが、さまざまな調査研究で示されています。ただしそれらの研究は糖尿病の患者さんを調査対象にしたものではなく、あくまで一般論です。しかも「適量」というのはビールならせいぜい1日に中ビン1本までという程度で、ごく少量にすぎません。その量を過ぎると害のほうが強くなります。 お酒を飲むときに、この程度の量を「適量」だと思える方は、そう多くはないでしょう。ですから多くの場合、やはり「原則禁酒」としたほうが、からだにはよいと言えます。

◆お酒のつまみが問題

アルコール自体に含まれるエネルギー量ももちろん無視はできませんが、それよりもむしろ問題なのは、おつまみです。アルコールを飲み始めると、つい自制心が緩んでしまい、「少しぐらいなら多く食べてもいいだろう」と思って指示エネルギー量を超えてしまうことが多いのです。その積み重ねが体重増加や血糖コントロールの悪化を招いてしまいます。また、飲酒時に食べるおつまみに塩辛いものが多いことから、塩分過多を招いて、血糖のみならず血圧コントロールを悪化させることもあります。

◆飲酒と低血糖の関係

アルコールには肝臓からのブドウ糖放出を抑制し、血糖値を下げる働きもあります。糖尿病の飲み薬を服用している人では、その作用がいつもより長引くことがあります。また、実際に低血糖症状が現れても(通常なら自分が気付く人でも)酔いのために気付くのが遅れます。さらに低血糖になっても肝臓からブドウ糖が放出されないので回復が遅れます。 このようにして起こる低血糖を「アルコール性低血糖」と呼んでいます。低血糖昏睡に陥っていても、周囲の人からは酔って寝ているように見られてしまう可能性もあり、緊急処置が遅れるという危険性もあります。

◆どうしても飲酒がしたいなら・・・

一般的には次の条件を満たすとき、2単位(160kcal)あるいは摂取エネルギーの1割を限度に飲むように指導しているケースが多いようです。 ・血糖コントロールが良好で安定している ・体重が管理できている ・合併症など飲酒制限が必要な病気が・血糖コントロールが良好で安定している ・体重が管理できている ・合併症など飲酒制限が必要な病気がない ・飲酒量の限度を守る自制心がある

■NSTとは

第一外科副部長 遠藤 公人
NSTとは  NSTとはNutrition support teamの略であり,栄養サポートチームのことです。患者さんの栄養面をチェックし,低栄養を改善していくことを目的としたチーム医療のことで,1970年頃に米国で発案されました。中心静脈栄養という高カロリー輸液法の開発が契機となったと言われています。 日本では1998年に藤田保健衛生大学の東口先生により導入されました。医師だけでなく,栄養士,看護師,薬剤師など多職種による検討が患者さんに正しい栄養療法を提供できることが示されると,日本の医療現場で軽視される傾向にあった栄養に対する理解とともにNSTの設立が一気に拡がりました。現在,700ほどの施設でNSTが活動しており,第三者機関による病院機能評価の評価項目にも挙げられています。 当院では平成16年にチームを結成,外科病棟での試験運用を開始,平成17年から全診療科の入院患者さんを対象に活動しています。メンバーは総合内科の山下部長をリーダーとして医師3名,管理栄養士2名,薬剤師2名,看護師5名で構成されています。

◆「NSTの活動」

  栄養を投与するには大きく分けて2つの手法があります。先にも述べた中心静脈栄養や腕などからの点滴による投与(静脈栄養)と,本来の姿である腸管を介しての投与(経腸栄養)です。静脈栄養,特に中心静脈栄養は,必要なエネルギーや栄養素をほぼすべて投与できる画期的な点滴法で,今でも臨床現場で施行される重要な診療手技の一つです。一時,盛んに行われた中心静脈栄養なのですが,残念ながらカテーテル感染症や代謝性合併症の発生が問題となります。一方の経腸栄養は,免疫能が維持されること,感染症の発症が少ないことが立証され,治療効果の向上につながることが確認されました。従って,腸管を利用できる患者さんには極力経腸栄養を行うべきであるという考え方を原則として,静脈栄養,経腸栄養,そして経口栄養を一貫して管理することが我々NSTの業務となります。
  対象となるのは検査目的やお産などの短期入院を除く全ての入院患者さんです。病棟看護師により,患者さんの栄養に関連した検査データと,手術目的入院であるとか絶食状態であるといった栄養状態に関連した状況が,栄養課に報告され,スクリーニングの後,NSTが介入すべき患者さんがリストアップされます。本年1月から3月までの間の982名の入院患者さんをスクリーニングすると,約25%にあたる253名の方がNSTによる介入を受けており,その内訳はほぼ全科に及んでいました(グラフ)。
  NSTメンバーは,週1回各病棟を訪れてNST介入となった患者さんの状態を病棟看護師から報告を受け,栄養状態や検査データの推移,治療の状況などを確認し改善すべき事項を提案しています。例えば,病態にあわせた投与熱量や栄養素を算出し,それを基準に点滴メニューや食事メニューの変更,点滴による栄養投与から胃瘻造設による経腸栄養への切り替えの提案などが挙げられます。また,ベッドサイドで患者さんに面談しながら上腕皮下脂肪の厚さや上腕周囲長などの身体計測を行って,栄養状態のさらに詳しい評価を行うこともあります(写真)。栄養を評価する一方,病状にもよりますが患者さんの食欲不振に対して味付けの変化や補助栄養食品の勧めも行っており,少しでも快適な「食」を提供することに努めています。
  また,職員全てに栄養を意識してもらうための啓蒙活動を実施することも大変重要です。勉強会や講演会などを今年も企画しておりますので,職員の皆様には奮ってご参加お願いします。
  当院はNST稼働施設に認定され,NST専門療法士のための学会認定教育施設にもなっております。また大棒薬剤師がNST専門療法薬剤師に合格,メンバーの実力もアップしました。患者さんにもすべての医療従事者にも,栄養についてより一層理解してもらえるようこれからも積極的に活動していきたいと思います。

グラフ