医療集談会

◆第87回<3月16日> 肩の疾患

東北大学大学院医学系研究所研究科医学専攻外科病態学講座整形外科分野 教授 井樋 栄二

東北大学大学院医学系研究所研究科医学専攻外科病態学講座整形外科分野 教授 井樋 栄二 今日は肩関節疾患の中から代表的な疾患として腱板断裂と肩関節脱臼についてお話しします。
まず腱板断裂ですが、腱板断裂は無症候性断裂を含めると相当数みられることが近年の疫学調査で明らかになってきました。住民検診では50歳代で10人に1人、80歳代では3人に1人の割合で腱板断裂が存在することが分かりました。腱板断裂は棘上筋腱にもっとも多くみられます。腱板断裂に伴う臨床症状には疼痛、筋力低下などがあります。疼痛は上肢を挙上するときに腱板断裂部と肩峰がぶつかることにより発生する動作時痛と炎症により引き起こされる安静時痛、夜間痛とがあります。断裂部位診断は棘上筋腱断裂に対する棘上筋テスト、棘下筋腱断裂に対する外旋筋力テスト、肩甲下筋腱断裂に対するLift-offテストがよく用いられます。画像診断には関節造影、MRI、MR関節造影、超音波などがあります。とくに3次元MRIや3次元超音波は形態の描出が優れています。保存療法としては消炎鎮痛剤の内服、外用、ヒアルロン酸の関注、温熱、可動域訓練などのリハビリテーションが行われます。保存療法で75%の症例はADLに全く支障のないレベルまで回復しますが、保存療法に抵抗する症例では手術的に断裂腱を修復します。近年、最小侵襲手術である鏡視下腱板修復術が広まりつつあります。
次に肩関節脱臼のお話をします。肩関節は私たちの体の中でもっとも脱臼しやすい関節として知られています。肩関節脱臼の結果、下関節上腕靭帯の損傷が起こります(Bankart損傷)。脱臼の整復には様々な方法がありますが、ヒポクラテスは5種類の整復法を記載していますが、日本でも江戸時代の図譜をみると、同じような方法が行われていたことが分かります。肩関節脱臼の大きな問題点は再脱臼率の高さです。若年者の初回脱臼は70%~90%が再脱臼を繰り返す反復性肩関節脱臼に移行します。整復後に肩を内旋位で固定しても再脱臼率は変わりません。私たちはこれまでの研究で、肩を外旋位で固定することで従来の内旋位固定に比べて再脱臼率をおよそ半分に減らすことができることを明らかにしてきました。現在、もっとも適した固定肢位、固定期間についての研究を続けているところです。反復性脱臼に移行した場合にもっとも確実な治療法は手術です。Bankart損傷を修復するBankart修復術が一般的ですが、これも近年では鏡視下に行われることが多くなってきました。