◆第67回<11月11日>
血液疾患:最近の話題から
                          腎血液内科副部長 福原  修

 血液の悪性腫瘍(がん)の代表は白血病ですが、ほかには悪性リンパ腫、多発性骨髄腫なども血液のがんです。現在、治療の中心は抗がん剤を用いた「化学療法」です。抗がん剤は点滴などにより全身に薬剤を行きわたりがん細胞を攻撃します。残念ながら、がん細胞以外にも多かれ少なかれ影響が及び、それが「副作用」となって患者さんを苦しめたり治療の妨げとなったりすることがあります。このため、副作用が少なくしかも効果の高い治療法の開発がどんどん進められています。今回は、こうした新しい治療についてのお話しです。
 がん細胞の表面には様々な物質が存在しており、これががんの種類を区別する目印にもなっています。そこでその部分に結合する薬が開発されました。その代表がリンパ節のがんである悪性リンパ腫の治療に用いられるリツキシマブという薬です。これはリンパ腫の細胞の表面にあるCD20という物質に結合してその細胞を破壊してしまいます。体の大部分の細胞はCD20を持っていないためその薬の影響を受けないので「副作用」はおこりにくくなります。特定の細胞だけを狙うので「標的療法」とも呼ばれています。悪者を狙い撃ちしようという作戦です。
 多発性骨髄腫は骨がもろくなったり、貧血になったり、感染しやすくなったり、腎臓を悪くしたり・・・と多彩な症状をおこす病気で、本態は血液細胞のうち「形質細胞」ががんになったものです。治療は抗がん剤が中心ですが、この30年間治療成績の大きな向上が見られていません。
 「サリドマイド」は1960年代に妊婦さんが睡眠薬として飲んで手足の奇形をもつ赤ちゃんが産まれたという事件で有名な薬で、このため世の中からすっかり葬りさられたかに思われていました。この薬が多発性骨髄腫に有効であることがわかってきました。しかも抗がん剤の効かなくなった患者さんや、抗がん剤の副作用が出やすい高齢者にも使えます。
 次の話はがんではなく、血小板の病気。血小板は出血などがあった時にそれを止める働きをします。血小板が減って血が止まりにくくなったりする病気に「特発性血小板減少性紫斑病」(ITP)という病気があります。わりと簡単に良くなる患者さんもいますが、中には大変に治りにくい方もいますし、薬の副作用も悩みの種です。ヘリコバクター・ピロリ菌は胃の中に住みついていて胃潰瘍などを起こしやすくする細菌です。最近、胃潰瘍の治療として「除菌療法」が行われています。抗生物質と抗潰瘍薬を一週間飲んで除菌がうまくいくと胃潰瘍の再発がしにくくなるのです。なんと、ITPの患者さんにこの除菌療法を行うと血小板が増える人がいるということがわかりました。割と副作用の少ない治療ですので、効果が出ればすばらしいことです。
 血液の病気の治療は進歩が速いのが特徴です。今の段階で難治性の病気でも、なんとかふんばっていると画期的な薬が開発される可能性があるということです。



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