診療科から
■産婦人科から骨のある話題       第二産婦人科部長 千葉 裕二
1.はじめに
 以前、『高齢者と骨折』をテーマにしたNHKの番組がありました。それまでは若者に混じって登山もなさるほど元気であった高齢の女性が、大腿骨頚部の骨折を機に『寝たきり』と『車椅子』の生活を強いられ、顔の表情が見る見る変わってゆく様を観て驚きました。骨折は高齢者の人生を一変させる問題です。
2.女性ホルモンと骨粗鬆症
 身体の老化は年齢を重ねるにつれて徐々に進むのが一般的ですが、女性の骨(骨の密度)は男性と違って50歳前後から急激に減り始めます。女性では骨の吸収に女性ホルモンが関わっており、女性ホルモンが減少して閉経になると骨の吸収される量が骨の形成される量を上回り、骨密度が減少して骨粗鬆症になる方が男性に比べて多いとされています(図1)。
 高齢者が骨折すると、どうなるでしょうか?脊椎骨や大腿骨頸部の骨折は日常生活に極めて大きな障害となり、『寝たきり』を強いられ、『食欲減退』『思考力の低下』を併発し、『痴呆』が進むとされています。骨粗鬆症は高齢化社会を迎えた今日において極めて重要な問題なのです。
    
3.骨のライフサイクル
 若い時は余り意識しない『骨』は日常生活には欠かせない身体のパーツです。骨では常に骨吸収と骨形成がバランスをとって維持されています(骨のリモデリング)。骨の一生を見ると、骨の密度は20歳台前半にピークを迎え、以後は減少(老化)の一途です。女性では妊娠・出産・授乳で減少と復活を繰り返し、50歳前後からは急速に減少します。そして70歳頃には『スカスカの骨』になり身体を支えきれなくなるのです。高齢になっての骨折では再生能力も十分ではありません。骨折を予防する事も重要ですが、若い時から骨の健康管理が必要と思われます。
4.骨の健康診断
 骨の健康診断方法は『骨密度(骨塩量)の測定』が一般的です。当院にも検査ができる装置が設置されています(写真1)。また、血液や尿で骨の吸収の度合いを調べる検査や血液中の骨を作るホルモン量を調べる検査などがあります。
        
5.骨の健康法
 骨を強くする方法は、@食生活:カルシウム(骨の材料)やビタミンDの摂取、A適度の運動:30分位の散歩も良いでしょう、B日光浴:ビタミンDが作用するためには日光の働きが不可欠です。天気の良い日の散歩はAとBを兼ねますね。それでも骨の密度が低下している方には治療が必要です。
6.骨粗鬆症の治療法
 治療薬として最近注目されているものに『ビスホスホネート』という薬があります。これは骨の吸収を抑えて低下した骨密度を増やしてくれます。効果は6ケ月位から出始めるとされています。米国では7年間服用した患者さんのデータがあり効果が実証されています。日本では発売されてまだ1年程ですので長期服用のデータがありません。女性ホルモンも同様の作用があり特に閉経直後の女性に使用され効果を認めています。ビタミンD製剤も治療に用いられていますが、骨折を予防する効果はありますが、骨密度を増やす効果は残念ながら認められていません。一方、骨の形成を促す薬は現在のところ発売されていません。
7.おわりに
 高齢化社会が抱える問題はさまざまありますが、骨の健康は若いときから意識しないと解決しない問題です。人間は自分の足で歩き、自分の手で食べ、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の声で話すという当たり前の事ができなくなると老化が加速されます。『骨太』こそが長寿の証かもしれませんね。『身体太』の私からの健康情報でした。

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