院長室だより
旅に病んで  やはり心配は医療事故        病院長 小山 研二

6月半ば、たまたま前任地の秋田に出かけた際に、病を発見され、即時の手術を受けました。術後は順調でしたが、痰を除くために、消灯後、もうもうとした噴霧を吸入する私を見て、妻が、暫くためらった後に「魔窟で阿片を吸っている、時代劇のひとこまのようだ」と、とんでもないことを言ったのです。娘(息子の嫁)とキャッキャッと笑い合っている妻を見て、不本意ながら、ついこちらも笑ってしまい、その後は、「さあ、また阿片を吸うか」などというセリフが出て来て、妻たちの奥深い癒しに感謝したのでした。
 人の一生が有限であることは当り前ですが、病んでみて、自らの有限性を改めて強く意識しました。そんなことを妻に言うと、顔を曇らせて、「自分たち夫婦のどちらかが死ぬなんてことは考えたことも無かったけど。でも、永遠に生きるわけでは無いのだから、齢を重ねて何となく消えていくように思っていたのでしょうね」とつぶやきました。その、いかにも自然で愛情に溢れた発想に胸を熱くしながらも、『そんな訳にもいかないよ』と、多くの会話を重ねました。そして『何時、どんな最後を迎えるかわからないことを、これを機会にきちんと認め、それを前提に、一日一日を愛おしみ濃密で豊かな生活を送ろう』という、実に単純かつ当り前の結論を、私は素直に、妻はやや不満げに、受け入れて一応の安心に達しました。
 この重い会話の後は、病院の心配、特に、医療事故が起こっていないか、という心配が胸を去来しました。私どもが、医療事故ゼロを目指しているのは勿論です。しかし、国内外の病院がどんなに医療事故対策を強化しても、事故がゼロにならないのは残念ながら事実です。ならば、万が一にも過誤があった場合は、直ちに患者さんに説明し謝罪する姿勢を患者さんに判って頂き、病院から何も言われないのは医療過誤が無い証拠だ、と信じて頂ける病院であり続けたいと思います。この情報開示の見本として、自分の病名や病状を職員に直接説明することが、院長としての責務だ、と思い定め、かなり早期に退院して仙台に戻りました。僅か12日の不在でしたが、八木山や病院の風景が懐かしく、安堵感を与えてくれました。(2002.7.8)

就任挨拶                          副院長 桃野 哲

この4月1日から副院長に就任致しました桃野哲です。簡単に自己紹介を致します。昭和22年に岩手県盛岡市郊外で生まれ、昭和40年東北大医学部に入学してからは、ほぼ仙台に住んでおります。学生時代はボート部に所属して、当時コーチの手島貞一前院長に出会い、指導を受けました。卒業後は、岩手県立磐井病院外科で初期研修を行い、昭和49年東北大学第一外科に入局、佐藤寿雄前々院長、小山研二院長に指導を受け外科医の基本をたたき込まれました。学位取得後に青森県の五戸町立病院外科医長として勤務し、当院が八木山に移転した昭和57年に外科医師として赴任して現在に至っております。消化器疾患や乳腺疾患等の診療を主に担当してきました。
 私は、今まで外科のみの診療について外来、入院、手術でどのように行うのがベストかを自分なりに考えてやって来ましたが、これからは、病院全体のことも一緒に考えることが必要になりました。赤十字の使命である災害医療はもとより、救急医療や医療の機能分化への対応(病院と診療所の機能分担)、病院の経営等私の前には難問が横たわっています。
 4月の診療報酬の改定で、病院の経営はますます厳しくなっております。各々の赤十字病院は独立採算制で運営されており、当院は今のところ大丈夫のようですが、今後は次第に厳しくなりそうです。これまでは、まったく分からなかった病院経営に関する勉強も必要になり、始めたところです。当院は築後20年になり、修理や増築をしながら来ておりますがどうしても手狭になり、最近改築された他病院と比べると診療環境は自慢できなくなっています。
  このようななかで私共は、きっちりした診療を行い、患者様から信頼される病院になり、地域医療に対しては従来にもまして力を入れて、地域の中核病院の地位を確保していくことが大切だと思います。幸いなことに当院は、4月から小山研二院長を迎え、その卓越した指導力の下で、この厳しい中で、さらなる飛躍をめざして進み始めたところです。その一つとして病院機能評価を受審することが決まりました。受審することで、職員一人ひとりがより客観的に病院の見直しを行い、改善すべきこと、欠けていることは何かをより明確に自覚できると思います。これからは、大変な作業が待っていますが、得られる収穫も大きいと考えます。
 職員の皆さんと一緒に、日進月歩の医療に置いてきぼりを食わないように日々の研鑚を忘れず、診療上有意義な事は柔軟に取り入れ、先進的かつ安全な医療を提供し、地域の皆様に頼られる病院をめざし努力していきたいと思います。
 未熟者ですが、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。  


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