◆第58回<5月24日>
 リハビリテーションをめぐる最近の動向
 〜障害モデルから社会モデル〜
                                  (No.43:8/1号より抜粋)

  リハビリテーション(以下リハ)という言葉が、やみくもに氾濫し使われている現状を鑑み、理念としてのリハ、技術としてのリハ医学、社会保障制度上のリハ・サービスの面から整理し、最近の動向について解説しました。
1. 理念としてのリハビリテーション
 リハが医療の分野に導入された当時、1942年の全米リハ評議会の定義は、「リハとは心身に永続する障害をもったものに、身体的、精神的、社会的、職業的、経済的な最大限の有用性を回復すること」で、さまざまなリハの枠組は、この定義が原点となっています。
 その後1981年に「完全参加と平等」をスローガンとする国際障害者年を迎えました。リハの定義も「有用性の回復」から、「各個人が自らの人生を変革するために、最も適した機能水準を達成すること」、「障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含む」と変遷、リハの究極の目標は、住み慣れた地域でのノーマライゼーションの実現となりました。
 WHOは障害に対する方向づけとして、国際障害者年に障害モデルに基づく国際障害分類(ICIDH)「機能障害−能力低下−社会的不利」を提案し、障害への介入はこのモデルに基づく障害発生予防とリハであると言明しております。さらに、健康と障害を1つの軸でとらえ、2001年の改訂版(ICF)では「生物・心理・社会的」アプローチをもちいる社会モデルが提案され、今後、新しいモデルに基づく体系が再構築されることになります。
2. 技術としてのリハビリテーション医学
 リハ医学の源流の1つは物理医学です。いわゆる物理療法が、治療体操、整形外科の後療法、(牽引、マッサージ)と結びつき理学療法の体系となりました。また、作業療法も体系化され、これらは、能動的に回復を図る新しいリハ医学の理念の下で治療手段として統合されました。
 医学モデルに基づく体系は究極的には「病理の治療」です。それに対し、障害モデルに基づくリハ医学は「機能状態の回復」です。機能状態を測定する主たる尺度が、筋力、関節可動域、ADL(日常生活活動)、QOL(生活の質)で、特に後二者のような抽象的な概念を科学的に検証した評価により、リハ医学のEBM(根拠に基づく医学)が問われます。
3. 社会保障体制の中のリハビリテーション・サービス
 医療における理学療法、作業療法、言語聴覚療法は診療報酬上リハと呼ばれますが、老人保健法の医療以外の保健事業、各種福祉法では機能訓練です。医師の実施計画のもと、理学療法士、作業療法士、言語聴覚療法士が直接関るか否かの違いがあり、必ずしも専門職種が関っている訳ではありません。リハの究極の目標が住み慣れた地域でのノーマライゼーションですので、医療、保健、福祉、介護の連携、地域リハの推進が今日的課題です。

(文:東北文化学園大学教授 佐直 信彦)


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