◆第56回<1月11日>
 前立腺癌の診断と治療について
(PSAによるスクリーニングを中心に)
                                  (No.42:5/1号より抜粋)

 前立腺は男性に特有な臓器であり、加齢とともに肥大することが多く排尿困難の原因ともなります。前立腺癌はアメリカでは男性の癌罹患率の1位、死亡率では2位と肺癌に次ぐ疾患であり、日本においても非常に増加しています。
 前立腺癌の診断においてPSA(Prostate Specific Antigen:前立腺特異抗原)が非常に有用であるといわれています。これは腫瘍マーカーのひとつで、前立腺癌の診断、治療効果の判定に使われています。また、当院の人間ドックでは、1998年9月から50歳以上の男性にはルーチンでPSAを測定し、PSA4.0ng/ml以上の高値を示した患者さんには、経直腸エコー、MRIなどを行い、確定診断のための前立腺生検をできるだけ施行するようにしています。
 当院においては1996年から2001年までの6年間で前立腺生検査を252例に対し286回行い、このうち118例(47%)に前立腺癌が発見されました。PSA高値になるほど癌の検出率も増加し、人間ドックおよび健診でPSA高値を指摘された症例では、32例に39回の生検を行い、16例(50%)とかなり高率に前立腺癌が発見されました。これらのほとんどがPSA30ng/ml以下であり、画像診断上も限局性の癌である症例でした。
 当院においては過去6年間で128例の前立腺癌が発見され、1996年の年間14例から2001年は年間34例と急増しております。その多くは局限性前立腺癌症例の増加によるもので、人間ドックでPSAによる前立腺癌健診を行うところが多くなったことによるものが多いと考えられます。根治的治療となる前立腺全摘術の適応となるのは75歳以下で限局性の癌の症例であり、当院でも増加しております。
 これからの前立腺癌は、食生活の変化による増加のほか、高齢化社会の影響により患者数は増加するものと思われます。根治的な治療のためには早期の限局性の段階で発見することが重要であり、そのためには一般外来、人間ドック、健診などでのPSAチェックがさらに重要になってくるものと思われます。

(文:泌尿器科部長 太田 章三)
 
◆第57回<3月8日>
 呼吸器臨床における最近の話題
 〜肺癌遺伝子治療、間質性肺炎診断基準改定、肺炭疽に関するトピックス〜

                                  (No.42:5/1号より抜粋)

 『肺癌遺伝子治療』
 近年の癌による死亡率の増加は著しく、3大成人病の中でも1位を占めています。特に肺癌はタバコの消費量の増加、進行癌になってからの発見が多いことから胃癌を抜いて癌により亡くなる方の第1位となってしまいました。最近は手術、抗癌剤、放射線治療以外の治療法として遺伝子治療が脚光を浴びるようになり、東北大学によるp53遺伝子を用いた臨床試験に対する効果が期待されています。また、当院では早期発見を目的に、 肺癌ドック喀痰細胞診検査+胸部ヘリカルCT)を開始しました。

『特発性間質性肺炎診断基準(第4次)改定にあたって』
 特発性間質性肺炎は心筋梗塞、乳癌および前立腺癌などの疾患よりも予後が悪い疾患で、厚生労働省の特定疾患に認定されています。その診断基準は1991年に策定されており、医学の進歩とともに改定の必要が生じました。国外のガイドラインとの整合性をはかり、新たな診断技術を取り込み、さらには病理像・ステロイド療法に対する反応性でサブグループが分類されています。平成15年4月より施行の予定ですが、治療法の選択にもつながり実地臨床にとって有用なものと言えるでしょう。

『肺炭疽』
 炭疽菌とは、土壌に存在するグラム陽性有芽胞大型桿菌です。例外なく感染動物との接触が感染契機となり、症状が皮膚・腸・肺に現れます。@皮膚炭疽:皮膚創部や昆虫咬傷部からの侵入により感染し、発疹ニキビ様病変→水疱→黒色痂皮を伴う潰瘍と変化します。A腸炭疽:汚染された肉、乳製品、水などの経口摂取により感染し、嘔吐、腹痛、発熱、吐血、下血といった症状が現れます。B肺炭疽:芽胞を大量に経気道吸入することにより感染し、激しい縦隔リンパ節炎・全身感染症へと進むため、呼吸困難、昏睡、ショックなどの症状がでます。皮膚炭疽は100%治癒が期待されますが、肺炭疽は早期に治療を開始しないと、ほとんどの人が死亡してしまいます。

(文:第一呼吸器科部長 三木 誠)


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